鉄工業の事例

受注時期:2000年8月頃
本番稼働:2001年8月
ある鉄工企業様にTPiCSを導入し、マスター整備から本番稼働、そして運用の定着までの内容を以下に記述していきます。

[TPiCS導入きっかけ]
鉄工企業様の得意先である企業が短納期化を実施することになりました。その当時でも注文の確定が4日後1日確定になり、日々の発注(資材の手配・外注への発注)が忙しい毎日だったのをどうにかしなければより短納期に対応することが難しくなることを実感してシステム化を考えたようです。

システム化の狙い
1.得意先の内示変動に対応
2.得意先の短納期化に対応
3.手配業務の簡素化
4.社内工程の標準化

1.得意先の内示変動に対応
 受注を管理し、人間で資材や外注の手配を行っていると内示変動が激しくなることで限界があります。そして一般的に資担当者は資材を余分に発注しておき安全在庫を社内に持っておこうとします。しかし、担当者はシステム化を通じて在庫を適正に保ち、内示変動に振り回されないようにしておきたいと考えてらっしゃいました。
 内示変動が大きいということは社内の生産にもどの注文で本当に作り出して良いかが分からなくなります。明確に社内で生産計画があり、その計画に基づいて指示が出れば現場も安心してモノを作ることができます。
 この内示変動に人間が振り回されず、そして安定した計画を立て手配と社内の工程指示などを出せるようにすることが狙いでした。

2.得意先の短納期化に対応
得意先の内示変動に対応することで最低でも作業や手配に取りかからなければならない時期には指示が出てくるようにしていく狙いをクリアすることで確定された時には安定して作業を続けられるようにしていく。当然、内示納期よりも急に前倒しの確定納期になることもあります。急な生産が必要ですから、資材がなければ生産もできません。そこはシステムに設定している安全在庫で資材はカバーし、社内作業に取りかかれるようにします。それでも資材が不足しておれば特急計画が作成され、ジャーナルと呼ばれるもの(お知らせ)が発行されます。担当者は普段はあまり手配について意識せずにジャーナルが出た時に対応すれば良いようになります。  対応と言ってもシステムは(ただの道具なだけ)決められたマスター通りに、決められたシステム通りにしか動きませんので人間でカバーする必要がありますが特急にだけ焦点を絞って対応すること得意先の短納期化に振り回されることを防ぐことを狙いました。

3.手配業務の簡素化
得意先の短納期化対応でも言いましたが、運用中にジャーナルが出てきます。マスターがしっかり整備されていれば得意先からの受注に振り回されることなく、そして社内工程にモノを何時々々までに納めなければならないなどを考える必要がありません。特急や変な事があればジャーナルに記載されてきます。業務の流れを完全に把握しておかなければ出来なかった手配業務は誰でも出来るようになっていきます。通常の手配業務を他の人に任せることができるようになることで、熟練の人にしかできない仕事(ジャーナルに記載されたものの対応)をすることができるようになります。本来、時間を割けなければいけない仕事に時間を作れるようにすることが狙いでした。

4.社内工程の標準化
システムを動かす為にはマスターをしっかり整備する必要があります。よくある話ですが、明確に記載されたものがなく"現場の人、熟練の人の頭にしかない"と聞くことがあります。当然、他の人はモノが次ぎに何処へ行くのか分からず、人に聞かなければいけない状態になります。そんな無駄を無くすことが作業の効率化を助けます。他にもある作業を行うのに1個作るのに標準的にどれぐらいの時間が掛かるのかを登録しておくことで実績を取り作業効率の改善などに役に立てるデータを蓄積していきます。
 マスターを作成するには"現場の人、熟練の人の頭にしかない"と言われている人達の協力が必ず必要です。大抵、頭の中に社内の事が入っている人達は(自分の仕事を取られる)システム化を嫌がったりしますが、本来、熟練者がする仕事は別にあると思います。いちいち作業者に指示を出すのではなくお客様の納期にあうように工場をスムーズに動かすことを考え、全体でモノを見るようにしなければならないと思います。これが出来るのは熟練者だけだと私は思います。  話はそれましたが、マスターは熟練者の頭の中身でそれを誰でも分かるようにしたものと言えるでしょう。それを作ることで作業の無駄を省き効率よく動けるようにしていく

bar002.gif
 [資材担当者の声]
bar002.gif
1.内示変動、短納期化について
 得意先の短納期化に伴いシステム導入をしてきましたが、システムの効果を実際に実感しているのは私ぐらいかもしれませんね。と言うのは、短納期化になる前にシステム化を実施した為にシステム化をしなかった状態で得意先の短納期化に対応している状態をみんなは経験せずに済みました。その状態は想像の世界にだけ存在します。システム化を実施していない状態を想像してみると得意先の内示変動に振り回され、短納期の確定情報に振り回され社内は混乱していたことでしょう。

2.手配業務について
 今まで手配業務を出来るのは社内の工程、外注先や仕入先のリードタイムなどを把握している人だけでした。当然、得意先の受注状況も把握しておく必要はあります。そんな手配業務でしたが、システム化することで誰(今年入社した新人)でも出来るようになりました。
 私はジャーナルが出てきたモノを見、本当に急な発注が必要なのかマスターが変なのかを判断し、仕入先・外注先との交渉や得意先との納期交渉などをすることに時間を割くことができるようになりました。

3.マスター作成
 マスターの作成は約1年ぐらい掛かりましたね。システム化をする仕事だけ専任という訳にもいかず、通常業務も同時に行わなければならないのがかなりきつかったですね。(導入担当者は1人で頑張っていました)
 当然、マスター作成をするには社内の工程を理解し、仕入先・外注先の発注リードタイムを分かっている必要があるので熟練者でない人にはできません。その事も手伝って仕事を他の人に振ることができなかった事も簡単には終わらなかった要因の一つでした。

4.導入当初について
 導入当初はジャーナルがたくさん出て、大変でした。初めはどうしても安全を見込んでリードタイムを実際よりも長く設定してしまいがちでした。社内についても工程間に1日余裕を入れたりと製品が出来上がるまでのトータルリードタイムが長くなってしまいました。
 毎日少しずつですが、システムユニさんに聞きながらマスターの修正をしたり、在庫調整をしたり、不要な注残を消したり、社内で見直しをしたり3ヶ月間は根気がいる作業でした。

5.現在
 根気よく一つずつ問題を修正していく苦しい3ヶ月間を乗り越えたことによってお話した内容(上記)の効果を上げられていると(私だけだと思いますけど)思っています。現在は得意先の納期が2日後1日確定にまで短くなっていますが、それにも対応することが出来ています。

[番外]
 担当者は以下のようなことも仰っておられました。
 システムを導入するだけで運用がスムーズにできると思ってはいけませんね。
2001年宇宙の旅ではないですが、骨が転がっていてそれを持つだけでは骨は骨のまんまだ。骨を手に持ってモノを叩いたりしたらそれは道具に換わる。
システムもあるだけでは骨と同じで、それを使ってこそ道具となるからね。道具を使えるようになるにはまずシステムが無い状態(手作業)でも現場をまわしていける仕組みが大切だと思います。その仕組みが出来てこそ道具をより良く活用することができるからです。